ネタバレします。
なんか↑これが「レなねえ」みたいだ。
いえいえなんでも。
記憶とか妄想とかで書いているので、細かいところが実在の人物・団体名等とは
異なるかもしれません。
タイトルを一瞬、はじけるライムの香り!とかにしようかと思ったのですが、
一瞬だけね。一瞬。うん。

リンカーン・ライム シリーズ/ジェフリー・ディーヴァー著/文春文庫
1『ボーン・コレクター』
2『コフィン・ダンサー』
3『エンプティー・チェアー』
4『石の猿』
5『魔術師(イリュージョニスト)』

祝!5巻文庫化!
というわけで、5からさかのぼった後また1から読んでみました。
6、7も出ているようだが近所の本屋にはなかった!
短編集『クリスマス・プレゼント』で短編でも健在と、
長編『悪魔の涙』には電話でゲスト出演、
といった作品もシリーズに含めておいてよろしいかと。
後者は発想が面白い分、探偵がその特技を生かして捜査する場面が少なくて、
ちょっと残念だった。推理小説?としては。
ロマンス?みたいな感じで読めばとても面白かった。
ライムも出てたし(笑)。

さてさて。
面白かったよ~。面白いよ~。とてもおススメ。
主人公はリンカーン・ライム(40前後)元NY市警警部(補だったかも)。
NY市警の鑑識課を、なんとかかんとかいう、
警察がそれを好きらしい、頭文字だけ取ったなんか格好良さげな名前あるじゃないですか。
UFJ=ウルトラ・フジヤマ・ジャパン(銀行)とかみたいな、
えーと、だからなんか特別な鑑識チーム?
みたいなのを作ってレベルをあげたとかいう、あー…。
要するに「鑑識の鬼」みたいな人だったのですよ!今もそうだけど!
「鬼」とかは云われていませんが、作中では「NY(世界)一の犯罪学者」。
まあ別にそれはいいのですが(いいんだ)。
…昔はそこに喰い付いたのではないかと思ふ。
学部生の時に『石の猿』まで読んだのの再読なのだ。
それもいいんですが!

ホームズの昔から探偵というものは、
自分の街を歩き回って土を集めるものなわけで、
ライムもその衣鉢を継いで、かどうかは知らないけれども、
NYを歩き回って土を集めていたわけです。
土とか葉っぱとか、タイヤの跡とか足跡とか、紙とかインクとか。
で、犯罪現場に残された微細物証拠物件を集めて、
いつも歩き回って集めてデータベース化していた資料と照らし合わせて、
証拠を挙げて、犯人を追い詰めてつかまえるのでした。
データベースも冊子式からコンピュータ式へ進化しますがね。
コンピュータ関連の証拠は「ナスダック物」と呼びます。
それである時なんか、
天井に残された弾丸に残された髪の毛のDNAから犯人を挙げたのだ!
そういう髪の毛とか埃、塵、泥、なんかのカケラ、とかが微細物証拠物件。
この「微細物証拠物件」というのがいいな!と思って読んでいたのでした。
初めは、とりあえず集めたはいいけれども、
それ自体がなんなのかわからない証拠も多いというのがとっても面白いのだ。
でもそういうよくわからない証拠が後で大事になってくるのです。
計画どおり!

ちょうどG氏が『上と外』を読んでいた時で、
ジャングルとかインカ帝国とかがいい!広い!
とかとか云って彼女が燃えていた時に、私は微細物証拠物件にはまっていたので
それをお話してあげたら、
なんかすごく意味深な沈黙をもらったよ。
あまり興味を持ってもらえなかったようだ。

閑話休題。
で、その微細物証拠物件が「ライムの好物」なのです。
砂粒なんかもう、大好きですよ!
でもそれは大事だけど2番目の大事で、
一番大事なのはライムがC4四肢麻痺患者だということです。Cじゃないかも。
脊椎の4番目の骨を損傷した四肢麻痺の患者さん。治療などが微妙らしいです。
ライムは現在左手の薬指と、肩と首と頭が動かせるだけで、
巨大なクリニトロンのベッドに隠遁生活をしております。
クリニトロンは会社の名前だと思うけど。4作目くらいから違うベッドになるよ。
話が進むに連れてシップ・アンド・パフ操作(呼吸操作)の車椅子に乗ったりもしますが、
基本的には現場検証は、昔のように自分ではできず、
パートナーのアメリア・サックス(30代前半)が彼の手となり足となり目となり、
現場のグリッド捜査をします。
30センチずつ一方向に三次元の現場を、証拠を探して歩き回る捜査。30じゃな(以下略)。
終わったら直角に向き直して、また30センチずつ歩きます。
これは鑑識の中でも一番徹底した捜査で、
その徹底故に、でも普通はあまりやらないのですが、
ライムはこれをやらなきゃ気がすまないので、
ライムが現役の頃は「碁盤目(グリッド)を歩く」と云えば、
現場捜査をするのと同義だったのでした!

なんか徹底してていいなあというのと、
やっぱホームズの挿絵っぽいなあというのと。
細かいところが面白いんだもん。
ライムとサックスのロマンスも、もちろん面白いです。

作者は究極の安楽椅子探偵を生み出そうと、ライムを創作したのだそうです。
映画にもなってますが、映画はイマイチだったなあ…。
どうりで続編の噂は聞いたことがない。
多分トムが出てなかったのは敗因の1つだと思う。
キャストは割とゴージャスだったような、そうでもないような。
要するにイマイチだったということしか覚えてない(笑)。

「ジェットコースター・サスペンス」
「二転三転するストーリー」
「どんでん返しの妙」
等々、ディーヴァーというとやっぱ「ジェットコースター」でしょうが、
そういった数々のアオリに嘘はありません。
そこが面白いというのは当然だから、ここまで書かなかっただけなのだ!
別に微細物証拠物件だけが気に入ったからではないですよ。
「この人怪しいよ!怪しい!」とか、
「逃げてサックス-!」とか、
「むしろ逃げてライムー!逃がしてトムー!」とか、
叫びながら読めるのがとても楽しいです。
明らかに怪しい人も犯人だったりしますが、
明らかに絶対関係ないと思っていた人が犯人だったりもして、
しかもライムが逃げられないので、
よく攻撃の的になったりして冷や冷やします。
サックス(ヒロイン。おそらく)も襲われてるけど、
数えたらライム襲撃数の方が多い気がする。
ヒーローなのに!主人公(おそらく)なのに!探偵なのに!

一般に「ライム組」と云われている捜査チームの面々は個性的で、
そこはやっぱり好きなのですが、
『石の猿』のゲスト刑事ソニー・リーはとっても好きだったし、
あー↑この作品はライムものとしては評価が低いようですが私は好きなんですが、
それはいいんだけど。
すっごくでばっていたと思ったのに2作目で降板してしまった、
大リーガーと同じ名前の彼のその後に一切触れられていないのは何故なのか。
3は旅行編だったからともかく、
4ですら消息がわからないのがすっごくすっごく気になった。
ジョジョにおけるフーゴのような理由があるのかなあ。
あまりに強すぎて、だから、この場合有能すぎて?
ライムをくってしまうから!とか?
…ないか。単に作者に忘れられているんでしょうね。
でもあんなに出てたのに!なんでだ!

ところで私が一番好きなシーンは『ボーン・コレクター』で、
それまでベッドに隠遁していて、
仲良くなってきたサックスにも、「車椅子にも乗れない」なんて云ってたくせに、
終盤、重要で難しい現場に車椅子で現れたところ。
ところで、グリッドを歩く時は、靴に輪ゴムを掛けておきます。
万が一捜査員の足跡と、現場に残されていた足跡が混ざってしまっても、
後でちゃんと区別がつくように。
で、重要証拠が残っていることはわかっているのに、
燃えてしまったために現場検証が困難だと落胆するサックスの前に、
ライムは颯爽と車椅子でやって来て(ホントに颯爽なのよ)、開口一番
「わたしは嘘をついた」
と、車椅子にも乗れないから外出もできないと云ったことを彼女に謝るのね。
で、謝ったんだからこの話は終わり、早く鑑識を行なおうと現場へ向かう。
その背中にサックスが、
「ぼけたんじゃないのライム。
 あなたの車椅子の車輪に輪ゴムを掛けるのを忘れているわよ。
 あなたの車輪跡と犯人の靴跡の区別がつかなくなったらどうするの。」
って云うところ。
とっても鮮やかで愉快。気に入ってそこばっかり何回も読みました。
なんか可愛いじゃないですか。

作者はシリーズ化は考えていなかったらしく、
それを思ってシリーズ通して読むと、
やっぱり『ボーン・コレクター』はネタが沢山つまっている気がします。
だから一番面白い。
でもライムとサックスの関係で読めば、
『コフィン・ダンサー』と『エンプティー・チェアー』が、
一番面白いかな。前者はトリックも面白いです。叙述トリック。
でも『石の猿』もすきv
話が面白いと思うなあ。鑑識の場所も世界記録をおそらく更新したし。
『魔術師』は通して読んだ時、初心に帰ったようなおどろおどろしさがある。
なんだっけ。あれよりよっぽど目くるめくあの夏をもう一度って感じがするよ。

とにかくどれも面白いので是非是非いろんな人が読めば良いと思うよ!

ところでさっきから出ているトムというのは、
ライム組の一人に強制召集された、
本来はライムの介護士です。
毒舌と自殺願望にまみれた初期の難しすぎるライムにただ一人、
6週間以上耐えられたという有能な介護士。
発言が面白いです。
何の根拠もなく薄々そうではないかと考えていたことが、
何の脈絡も伏線もなく、いや脈絡はあったのかもしれないけど、
『エンプティ』で明らかにされた時は、
ちょっと叫んで、なんとなくがっかりというか、図に当たってしてやったりというか。
ちょっと複雑でした。
それとも私が薄々とか云っている時点で既に伏線に引っ掛かっていたのでしょうか!
とにかく目が話せません。

今年中に6、7と、
派生したという『スリーピング・ドール』を手に入れようと思います!

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