『ユージニア』

2005年4月28日
(恩田陸/角川書店/平成17年2月5日)
中のチラシにあった紹介文「あの夏、青沢家で催された米寿を祝う席で、十七人が毒殺された。/ある男の遺書によって、一応の解決をみたはずの事件。町の記憶の底に埋もれた大量殺人事件が年月を経てさまざまな証言によって暴かれてゆく。真実を話しているのはいったい誰なのか?!」

うはー。気持ち悪い。気持ち悪い読後感。
読みました。読みましたよ、ユージニア。嗚呼、恩田さん久々…v
恩田さんだし、アレです。紹介文はウソです。暴かれません。誰も偽称はしてません。
しかし、最後の最後に探偵役が「犯人はあなただ!」とやるのかと思ったのですよ!追い詰めている感じがあったので。そういうことはなかったね。でも確かにごまかしても逃げてもいませんでした。気持ち悪いです。面白かった。
一人称がとても魅力的で、途中で三人称が挟まると、ちょっと読み飛ばし気味になりました。これはなんだろう。
恩田さんて、時々ぼこっと完全神の視点になりません? 私はなんだかそこでぽかっと覚めます。いいときもあるんだけど。『小夜子』とか。登場人物にべったりの方が気持ちがいい。
お話としては効果的だし、実際ある時点で、「あれってこれだったのか!」と興奮して何度しても戻って読み返したりしたんですけど。まあ、文体の好みの問題かな。
聞き書きスタイルがかぶっていくのって好きだなあ。芥川の『薮の中』はそんなに好きだった覚えがないけれども。
ブランコの頂点で何かとつながる、というと、『球形の季節』のイメージが浮んで、あれ好きだったので、なんだか嬉しかった。

職業作家の独立した一個の物語をきちんと読んだのがそもそも、久しぶりな気がするんですが(笑)、えーっと、ちょこっと気力がなかったので、読みたいなあとまでは思って買うのですが、読めてなくて。
パロディ作品は、前段階を既に知っているので読むのがラクだと思う今日この頃。基本事項は了解の上で、読みたいところだけ読めるではないですか。皿をもう持っているので、あと自分の食べたいものだけ上に乗せる感じ。
ちょっと食べ飽きてもきたので、皿から準備していく作業が嫌じゃなかったです。何より、導入部から惹き込まれたということはありますけど。

あー、でも、パロディでも全然、そういうのじゃないの、ありますね。解釈の一つを示すのでもなく、キャラクターだけ持って来て異次元へとぶのでもなく。隙間をうめるのでもなく。なんだろうああいうの。すごいのを読んだの。
そうするとねー、もう一粒で二度も三度もおいしい感じでどうしましょうって思います。あー、いかんなあ。うー、でも面白いんだもの〜。

えー、恩田さんいいです。ハードカバーで持っていたくなるのが難点です(笑)。

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