ハッチが開く。
 シーフォートは優しい顔でほほ笑んだ。怯えさせてはいけない。話を切り出したときの相手の顔を思い出し、そう思った。
 ――――何を考えているんだ?
 不信感をあらわにし、彼はシーフォートをまじまじと見つめたのだった。何を云い出すんだ? 嫌がらせなのか、この期に及んで。やっぱりお前は…。
 わたしはきみが好きなんだ、その思いだけが身内からわきあがり、わかってもらえない気持ちが、シーフォートはひどく切なかった。
 わたしはきみが好きなんだ。昔からずっと、慕う気持ちは変わらない。だからきみにも、昔の自分を取り戻してもらいたい。姿形が問題なのではない。そんなつもりはなかったのに、捻じ曲がってしまった二人の関係を通して、暗い眼でしか自分を見てくれない、そんなきみで居て欲しくない。
 入ってきた男は、戸惑いを浮かべ、校長私室を眺めた。
「遅くに呼び出して、すまない」
「いえ…」
「昼間の件なんだが…」
「ソリー・サー」
「…え?」
「ソリー・サー。やはり私には、無理です。できません」
 男は頑なに、首を横に振る。
 シーフォートはがっかりした。
「ソリー・サー」
 本当に申し訳なさそうな口調が、胸に痛い。謝って欲しいわけではないのだ。
「いや…いいんだ…」
 それでもシーフォートはかろうじて、それだけ云った。あまりに哀しそうに響いたからだろうか。慌てた声が返ってきた。
「貴方は、命令しませんでしたね、サー。それだけで、私にも…一応はわかっているつもりです。それでも疑ってしまうんです。なんでこんなことを、と…」
「わたしは…ただ…」
 もごもごと口ごもり、思わず視線を逸らそうとする。
 しかし、それは許されなかった。
「はっきり聞かせて下さ…、くれないか、ニック。俺は疑い深くなってしまった。はっきり云われないと、きみの気持ちがわからないんだ。疑ってしまう。実はまだ、仕返しなんじゃないかと疑っている」
 シーフォートは息をのむ。ああ、これだから。
 これだから自分は彼が好きなのだと思う。そして、こんな彼に弱い。決然と、顔を上げた。
「わたしはきみが好きだった」
「…ああ、知っている」
「誤解しないでくれ。今でも好きなんだ」
「…………」
「昔のきみに戻って欲しいなんて思ってない。でも、今のきみを見てると哀しい。そのままでいいじゃないか。そのままでいいから…」
 そうしてきっぱりと、云い切る。
「わたしのそばに居て欲しい」
 反応は無かった。シーフォートはちょっぴり意気がくじけそうになりながら、おずおずと云い出した。
「そのきっかけになればと…思ったんだ…」
「…………」
「きみはそのままで充分…」
「…………」
「服を…脱いでくれ…」
「…………」
「わたしも、脱ぐから…」
「…………」
 沈黙が痛い。シーフォートは後ろを向いた。
「トリヴァー、きみも…」
「アイ・アイ・サー」
 ずっと何も云わないで立っていたトリヴァーから、憮然とした声が返って来る。
 あれほど嫌がっていたのに、一度そうすると決めた以上、トリヴァーの思い切りは良いようだった。さっさと上着とシャツを脱ぎ捨てる。
 シーフォートはちょっぴり笑い、自分も脱いだ。云い出したのは自分なのだから、自分が率先して行うべきだろう。
「で? どうするんです?」
 開き直ったのか、トリヴァーは顎を上げ、腰に手を当てて鼻を鳴らした。

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…………そんなに引っ張るネタじゃないのですけどねー。なんせ腹芸だし。
書いてたら楽しいので(笑)。無駄に長くなってみた(笑)。
筆力がないので、完璧にだますとかは無理ですな。
大体そんな、頭ひねって考えたくない(笑)。

てゆーか。
立ち直れない。あの固い決意はどこへ?
今日もカカイルで徹夜した充血まなこでおでかけですよ(笑)。
…………自分がかなり阿呆だと思えて、切ない…。

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