竜の怒りに触れる。

2004年10月28日
『リア王』を岩波文庫で読んでいます。訳者は野島秀勝氏という方。
あとがきの日付が2000年になっているのでさほど古いとは思われないのですが、今72ページまで読んだのですが、とても面白いです。
わたしの御贔屓はケントさんです。ケントは武離纏組の若頭だったのですが、親分のリアの不興を買って回状が回ってしまったのですが、親分がすきなので、チンピラに身をやつして鉄砲玉として雇ってもらったのです。武離纏組のお嬢さんは三人居て、一番下のこが一番かわいいのですが、逆上した親分が仏蘭西組の組長にやってしまったので、これ以上リア親分に義理立てしたって何もいいことはないと思うのですが、そこはそれ、すきだからしょうがないんでしょうね。
そこまで読みました。
ところでケントは実は、48歳でした。結構衝撃的ではあったのですが、その台詞がまた、衝撃的でありました。

ケント 歌がうまいからとて女に惚れるほどの青二才でも、また、なにがなんでも女にうつつをぬかすほどの老いぼれでもない。あたしは四十八年の甲羅をへている。

知らざぁ云って聞かせやしょう。←効果
リア王は今さっきまで長女の所に居たのですが、そこの執事がまた、江戸っ子だってねえ、寿司喰いねえ。

オズワルド 御免なすって――〔退場〕

お控ぇなすって。←効果
リア王は物語序盤で、すでに錯乱気味です。初っ端からちょこっとおかしいはおかしかったんですけども、順調にエスカレートしています。

リア 「奥方様のお父上」だと! お館様の茶坊主めが。この父なし子の犬畜生め! この下司下郎! この野良犬め!

オズワルド(執事)が無礼なのでかんしゃくを起こしている場面です。
ケントがこれに便乗してさ。

ケント 足をすくわれっぱなしというわけにも参らないか、この蹴球遊びの下司野郎。〔足をすくう〕

この台詞には注がついてまして、脚注になっているのは大変読みやすいです。当時の貴族は芝生の上でボウリングするのが普通なので、路上でフットボールをするのは下層階級の子どもなんだそうです。
それはともかく、こうして尻馬に乗って哀れなオズワルドをすっ転ばした功績により、チンピラに身をやつしたケントは、無事に王の信頼を得ました。

リア 礼を言うぞ。お前は忠義な奴だ、目をかけてやる。

とても面白いです。
リア親分は武離纏組を立て直せるのでしょうか。ケントは三番目のお嬢さんと結婚して二代目として組を継げるんでしょうか。どきどきの展開です(そういう話ではありません)。

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