『営倉』などと云う部屋があるわけではない。規律違反を犯した水兵ども――例えばトゥアクやロゴフのような――を一時勾留するための拘置房は第三層にあったが、シーフォートが自らそこへ足を運ぶとはホルサーは考えなかった。機関長私室の外で真っ直ぐに立哨していたヴィシンスキーも勿論、大股でそこから出て来るなり誰かを求める目になったホルサーを、拘置房へ案内するようなことはなかった。
だだっ広い貨物区画の一画だった。片隅に手ぶらの水兵が所在無さげに立っており、タマロフも同じようなものだった。シーフォートは上着を身につけたまま搭載貨物に背を預け、肩膝を立てて座っていた。甲板に視線を伏せている。ただなんとく、つまらないだけなのだという風情に見えた。
「何をしているんだ、ミスタ・シーフォート…」
ハッチを開いた途端、目に飛び込んで来たそんな光景にホルサーは思わず呆れ声を漏らした。シーフォートが視線を上げた。
「…脱落した候補生を見物しているような暇があるんですか、ホルサー艦長」
声が刺々しい。ホルサーは力が抜けた。それで下がった眉尻をどう誤解したものか、シーフォートはあからさまな敵意を見せた。ホルサーは口元を引き締めた。
「どなたとお間違えですか、ミスタ・シーフォート。自分は士官候補生ホルサーであります、サー」
無心に見つめた。シーフォートは睨み返してきたが、その瞳の険も徐々に薄らぎ、やがては真っ赤な顔で俯いてしまった。ホルサーはため息を吐いた。自分を恥じるくらいなら最初から、似合わない当て擦りなど口にしなければいいのにと思う。
「すまない、ヴァクス」
勝手な誤解への消え入りそうな謝罪は、ホルサーの口元をほころばせた。
「ノー、ミスタ・シーフォート。それで、あなたはこんな所で何をしているんですか」
「きみこそ何をしに来た」
ホルサーはちょっと考えた。
「これは意味が無いと伝えに来ました」
「何故」
問いながら、シーフォートは深いため息を吐いた。答えは既に自分で出しており、ホルサーに求めてはいないように思えた。
案の定、シーフォートは呟いて、ホルサーをがっかりさせた。
「おれが居ない方が何もかもが上手く行く」
覚えた落胆は不可解だった。タマロフとヴィシンスキーが自分と同じような顔をしているのを見ると、もっと奇妙な感じがした。
「…ミスタ・タマロフ、ミスタ・ヴィシンスキー、しばらく外で待っていてくれないか。そこのきみも」
おかしな見張りを云い付けられていた水兵は安堵の表情を浮かべる。上目に問うてきたタマロフにかぶりを振ってみせる。何が通じたのか、タマロフは諦め顔でヴィシンスキーを促してハッチを出た。
「…なに?」
不信感をみなぎらせたシーフォートの声を無視し、ホルサーは上着を脱いだ。
######
どう考えても国連宇宙軍軍艦に「おじいさん、干草のベッドね(byハイジ)」と云えるほどの藁が敷き詰めてあるとは考えられなかった。真剣に考えたんだけど。荷物のクッション材に使ってあるかもしれないとか。地球に優しいし。でもそれを引っ張り出してわざわざ敷いてから戯れるなんて、わたくしの美意識が許さない(くだらないプライド)。
あと多分、営倉→えいそう→営巣の連想から藁が出て来たのだと思われる。えへ。
全部話を決めてから書く時はこういうことは滅多にないのですが、結末だけなんとなく決まっていてテキトウに書き始めちゃって途中でケツの据わりが悪いと気付くとこんなことは日常チャメシゴトですな。ははは。
あははは…うふふふ…あ、ちょうちょ…(飽きてきた)。
だだっ広い貨物区画の一画だった。片隅に手ぶらの水兵が所在無さげに立っており、タマロフも同じようなものだった。シーフォートは上着を身につけたまま搭載貨物に背を預け、肩膝を立てて座っていた。甲板に視線を伏せている。ただなんとく、つまらないだけなのだという風情に見えた。
「何をしているんだ、ミスタ・シーフォート…」
ハッチを開いた途端、目に飛び込んで来たそんな光景にホルサーは思わず呆れ声を漏らした。シーフォートが視線を上げた。
「…脱落した候補生を見物しているような暇があるんですか、ホルサー艦長」
声が刺々しい。ホルサーは力が抜けた。それで下がった眉尻をどう誤解したものか、シーフォートはあからさまな敵意を見せた。ホルサーは口元を引き締めた。
「どなたとお間違えですか、ミスタ・シーフォート。自分は士官候補生ホルサーであります、サー」
無心に見つめた。シーフォートは睨み返してきたが、その瞳の険も徐々に薄らぎ、やがては真っ赤な顔で俯いてしまった。ホルサーはため息を吐いた。自分を恥じるくらいなら最初から、似合わない当て擦りなど口にしなければいいのにと思う。
「すまない、ヴァクス」
勝手な誤解への消え入りそうな謝罪は、ホルサーの口元をほころばせた。
「ノー、ミスタ・シーフォート。それで、あなたはこんな所で何をしているんですか」
「きみこそ何をしに来た」
ホルサーはちょっと考えた。
「これは意味が無いと伝えに来ました」
「何故」
問いながら、シーフォートは深いため息を吐いた。答えは既に自分で出しており、ホルサーに求めてはいないように思えた。
案の定、シーフォートは呟いて、ホルサーをがっかりさせた。
「おれが居ない方が何もかもが上手く行く」
覚えた落胆は不可解だった。タマロフとヴィシンスキーが自分と同じような顔をしているのを見ると、もっと奇妙な感じがした。
「…ミスタ・タマロフ、ミスタ・ヴィシンスキー、しばらく外で待っていてくれないか。そこのきみも」
おかしな見張りを云い付けられていた水兵は安堵の表情を浮かべる。上目に問うてきたタマロフにかぶりを振ってみせる。何が通じたのか、タマロフは諦め顔でヴィシンスキーを促してハッチを出た。
「…なに?」
不信感をみなぎらせたシーフォートの声を無視し、ホルサーは上着を脱いだ。
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どう考えても国連宇宙軍軍艦に「おじいさん、干草のベッドね(byハイジ)」と云えるほどの藁が敷き詰めてあるとは考えられなかった。真剣に考えたんだけど。荷物のクッション材に使ってあるかもしれないとか。地球に優しいし。でもそれを引っ張り出してわざわざ敷いてから戯れるなんて、わたくしの美意識が許さない(くだらないプライド)。
あと多分、営倉→えいそう→営巣の連想から藁が出て来たのだと思われる。えへ。
全部話を決めてから書く時はこういうことは滅多にないのですが、結末だけなんとなく決まっていてテキトウに書き始めちゃって途中でケツの据わりが悪いと気付くとこんなことは日常チャメシゴトですな。ははは。
あははは…うふふふ…あ、ちょうちょ…(飽きてきた)。
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