(エドワード・D・ホック著、木村二郎訳/ハヤカワミステリ文庫/2003.8.31)
裏表紙紹介文抜粋「二万ドルの報酬で価値のないものだけを盗む、変わり者の怪盗ニック・ヴェルヴェット。(中略)盗みのプロのニックが逆に盗まれてしまう表題作の他、プールの水、山の雪、ホームズのスリッパなど、心優しき怪盗ニックが十二の難関にアッと驚く発想で挑む待望の第二短編集」

時々やるんですが、一より先に第二を読んでしまったようです。
しかし、ルパン?世を途中だけ見ても十分面白いようなもので、とても愉快でした。
怪盗ニックの本名はニコラス・ヴェルヴェッタと云うらしいですわ。この人がかなり能天気で楽天的で抜けてたりもして可愛いのですよ。家にグロリアという恋人がいて、彼女に土地コンサルタントの仕事で出張とか、政府の極秘諜報任務に携わっているとかホラを吹いて仕事に出て行くのですが、あっさり信じてるグロリアもとっても可愛い女。ホントは全部知ってて、ニックを許してあげてるんだろうな。
全編に漂う雰囲気をたとえるなら、深刻なトラウマのない壮年シーフォートと衝撃的事件に巻き込まれる前のアニー(笑)。
だってタイトルに惹かれてふらふら買ってしまったのだもんーv
二人で小さなパーティに呼ばれた時、ニックのズボンがほつれたので裁縫道具とベッドルームを借りてグロリアに縫ってもらう場面があるのですが、「恥ずかしいわ、ニッキー」「ぼくがどんな気持ちでいると思うんだい?」という遣り取りが、めっちゃラブリーv

怪盗ニックは高価な美術品や骨董品は盗まないのがポリシーなので、依頼を受ける際に依頼人に、それは本当になんの価値もないものなのかと確かめるんです。すると当然、では何故そんなものが欲しいのかという好奇心がわく。不可能な盗みを可能にする工夫も軽やかで面白いんですが、大体はその謎を解くことが主眼になっています。
しかし段々、盗んで欲しいと云う以上、依頼主にとってはなんらかの価値があるに決まっていると最初から気付いていて、何を盗めと云われても投げ遣りに依頼を受けてしまったりするニック。仕事に誇りを持とうよ(笑)。
大層面白かったですv

ミステリ系のものを久々に読んだら、謎解き場面でニックが、すごくさらっと書かれていた箇所をヒントに謎を解いていたりするのが懐かしくってー。懐かしかったです。昔、ミステリをむさぼり読んでいた頃は一言一句まで揺るがせにせずすべてを疑って読んでいたものです(懐疑的読書。あまり楽しくはない;笑)。その時の気持ちを思い出しましたのことよ。今は素直にぼへーと読んで、最後に理解してにっこりいたしますのことよ。

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