『てのひらの闇』

2003年10月17日
(藤原伊織/文春文庫/2002.11.10)
裏表紙「飲料会社宣伝部課長・堀江はある日、会長・石崎から人命救助の場面を偶然写したというビデオテープを渡され、これを広告に使えないかと打診されるが、それがCG合成である事を見抜き、指摘する。その夜、会長は自殺した!! 堀江は20年前に石崎から受けたある恩に報いるため、その死の謎を解明すべく動き出すが……。解説・逢坂剛」

わーい。
ハードカバーで出た時、指をくわえて眺めていた「藤原伊織の新たな到達点(オビより)」が文庫に落ちてる〜v 一年も前に。
…いや、いいんだ。物欲を抑えて生きているので、あれが欲しいこれが欲しいと思ってもすぐさま忘れてしまうよう心がけているから仕方がない。忘れた頃に出て来たヘソクリの喜びを頻繁に味わえるラッキーな人生だ…(哀)。
それはいいけど藤原伊織! 心躍ったわ〜v
さて。
主人公の堀江さんは別に20年前の恩返しなんて考えていないようにも見えましたが、ハードボイルドの主人公だから、理由なんか別にどうでもいいんだ。その時やりたいことをしたいように後先考えずやったら結果がついてくるからそれでいいんだ。それがハードボイルド的主人公(誤解)。
〈快男児小説〉というジャンルがあるんですよ、…確か。主人公が快男児なの。うじうじ悩まない。とにかく即決即行。行動の人。物語は主人公の前進にひっぱられて進む。そういうの好きなの。だって、読んでいて気持ちがいいではないですか。シーフォートもある意味その感がある(あの人は悩みもしますけど)。『一夢庵風流記』はこの型だから楽しかったのだな。
傾奇者の心意気が太平の世にも受け継がれ、男達(おとこだて)として表現され、そこへ仁義の精神が持ち込まれて旗本奴・町奴等の組織が形成され、ヤクザ者の団体として連綿と続き、現代において堀江さんという形に収斂するわけですよ。きゃv堀江課長ステキv(信じてはいけない歴史)
ところで会社って、会長→社長→常務→部長→課長の順番なんですね。部長が課長より偉いなんて知らなかった。課長の方が字ヅラが偉そうじゃないですか。えと、じゃ、係長は?どこに入るの???
わたくしの恥さらしな無知はあっちの方へ投げておくとして。
面白いから読んで下さい。堀江さんがイカス〜v 彼を「若」と呼ぶ白髪の老人・坂崎氏もイカス〜v
藤原伊織の軽さというのはどうにも私には「軽い」としか云いようがないんですけど、なんかすごい好きだなぁ。湿っぽくて怪しいところはないの。嫌味なところもない。薄っぺらい軽さではなく、洒落てるんでもなくて…うーん、わたくしごときには表現しようがない。一読「面白かった!」とニンマリできる、好みの軽さであります。
読んでいる間ずっと、頭の中で野村の株式ナンタラのCMが回っていた理由は謎であります。淡い想いは胸の中へ…。
あ!日経新聞の新しいCM見ました? 私あのシリーズすごく好きなんですけど(笑)。女は変わった、男はどうだ、ってヤツ。男も変わったのですねぇ(笑)。

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