ボーイは上品な微笑を浮かべ「いらっしゃいませ」と私を迎えつつ、問うような窺うような目を向けて来た。名を告げる必要もないと思ったのだ。これがホープ・ネーションであればセントラルタウンに限らず、何処のホテルのボーイでも――云ってしまえばホテルでなくともボーイでなくとも――元首の私を姿で見分ける。それに馴染んでしまっていたからちょっとした失敗をおかした。「連れが先に来ている筈なんだ」
 心得たようにボーイは、最も夜景の美しく見える席へと私をいざなった。しかしそこに居たのは私の求める人物ではなかった。「マァム、お連れ様がいらっしゃいまし、」「失礼しました、お嬢さん」
 ボーイの口上を無視し、私は寂しげな女性に謝罪を投げた。間違えられてしまった。彼女は気まずい顔で立ち上がり、「待ちぼうけなのに往生際が悪くて…わたし…。一番良い席を一時間も占領しているんです。帰ります」
 私が迷うことなくこの席へと案内されたのであれば、アンソニーは自分で指定して私を呼び出した時刻に遅れたと云うことだ。「私も連れに約束を反故にされたようなんです。よろしければしばらく私に付き合っていただけると寂しい思いをしなくてすむのですが?」
 柔らかく申し出ると、彼女は花のように笑った。美しいカクテルを手におしゃべりをかわす。彼女は待っていた相手の悪口を云った。拗ねたようにとがらせた唇で話されれば別段悪い気はせず、私はお返しに孫の話をした。「素っ気無いでしょう?祖父を呼びつけるのにメモに三語、場所と時間と署名を書いて寄越すなんて」
 待ち人を呼び寄せるには謗るに限る。入り口に当のアンソニーが、ボーイの案内を断りこちらへ向かって来るのが見えた。「おや、来た。あれなんですよ、不義理な孫は」「素敵な方ですね」
「デレク…!ソリー・サー!どうしても断れない輩に袖を握られたんです」
 支援者のパーティから直行したのだろう。それなりの格好をしていて、身内の贔屓目を差し引いても十分に魅力的な若者に見える。「来なくても良かったのに、アンソニー。私はこちらのご婦人と楽しく過ごしている」
 アンソニーが彼女に目を向けると、彼女はラウンジの入り口を見て凍り付いていた。なかなかハンサムな男が、モデルか何かと思うような美女を伴っている。ひと目で状況を理解した私は、入り口の男と我が孫とを比べた。見劣りはしない。「お嬢さん、年寄りのわがままを聞いて下さいませんか?」
 彼女はハッと私を見て、「え?…あの、はい…ええ」「不出来ながら見てくれはそうそう悪いものでもないこの孫と、一曲踊ってやっていただきたいのです。本当なら私が申し込みたいところですが、少々飲みすぎたのか足元がおぼつかなくてね」
 片目をいたずらっぽくつむって見せると、彼女は「ありがとう」と云って立ち上がり、すっとアンソニーに右手を差し出した。なんら事情もたださないで軽く腰を折り、その手の甲にくちづけた点に免じて遅刻は許してやろうと思った。

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と、いう夢を見たの。忘れないうちに書いとく(メモしといて夜アップしよう)。
アンソニーがもう!もう!もおおおおおお!!!
むちゃくちゃ格好良かったのっ!!!この後踊ったんだけど、ヤタラ滅法カッコ良かったのッ!!!
惜しむらくはこの女性が自分ではなかったということでしょう…。誰だったんだろうあのひと…。すらーっとしたセミロングの小柄な人で、…ある人に似ていなくもなかった。
ああああああああん!!!アタシもアンソニーの足を踏んずけて「ごめんなさい…!」とか赤くなりながら抱きとめてもらったりしたかった!!!そんでもってチラッとデレクの方を見たら「大丈夫ですよ」みたいに柔らかく微笑んでくれたりするの!!!
…にしても。なんでデレク視点の夢なんか見たんだろ? デレクはロマンスグレーのおじさまで、それはそれは素敵に見えたわ。…ということを覚えているとは、私の視点は何処にあったのか…。
そんなことはどうでもいいけど!アンソニーとデレクが良く似ていてね!あの人ってば両手に花だったのよおおおお!!!
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↑て、起き抜けに書いたの。あんまり素敵だったから感激して。アンソニーがッ!
…悔しいからばらしてしまうが、あの人、関東のデレカー某さんにものすごくよく似ていた…。
某さんの待ち人よりアンソニーの方が数段素敵だった…ごめんなさい…(なんとなく謝ってみる)。
アタシも若(=アンス)と踊りたかったなぁ。踊れないけど。にしたって人を踊らせてどうしようって云うのかアタシの脳みそ!
夢ってままならないものね。某さん、お返しに艦長とピクニックに行く早月とか夢に見てよ(また無茶を…)。

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