『半神』

2003年6月12日
(サラ・ウォーターズ著/中村有希訳/創元推理文庫/2003.5.23)

裏表紙紹介文「独房からは信じがたい静寂が漂ってきた。獄内の静けさを残らず集めたより深い静謐が。それを破ったのは溜息。わたしは思わず、中を覗いた。娘は眼を閉じ……祈っている! 指の間には、鮮やかな紫――うなだれた菫の花。1874年秋、倫敦の監獄を慰問に訪れた上流婦人が、不思議な女囚と出逢う。娘は霊媒。幾多の謎をはらむ物語は魔術的な筆さばきで、読む者をいずこへ連れ去るのか?」
サマセット・モーム賞受賞、大型新人登場! …らしいです(オビより)
翻訳家さんのサイト→翻訳家のひよこ http://www.ah.wakwak.com/~pinniku/index.html
メルマガ取ってるのv 古いイギリスのレシピとヴィクトリアン豆知識が楽しめますv
それで面白そうだったから買ったの(笑)。

テムズ河畔にそびえるミルバンク監獄を舞台に進むお話です。
主に、そこを「慰問」に訪れる「貴婦人」の日記(だから一人称)で語られます。主に。キーになるのが紹介文にある、女囚の一人=「霊媒」。
さてさてさてさて。
私、「ブック・レビュー」なんてまやかしだと思うわ。ひとこと、ジャンルを告げてしまっただけで「ネタばればれの上にもバレ過ぎましたね」という結果になる作品もあると思う。しかし、何を云っても読者からある程度の「意外性」「驚き」を奪ってしまうのだとしたら、宣伝部の人はどうしたら良いのですか? オビに何を書けば良いのですか?! ちょこっとの紹介文は?! だって、「これ以上は書けない」と書いてしまったらそれだけでネタバレじゃありませんの?!
アタシはよくよく本のジャケ買いをするし、帯の文句が素敵だから買うという本も多いから、ギンナンが好きだという人間はいちょう並木の下を、自転車も自動車も人間も動物も通るのだという並木道を、通い慣れてそれでもギンナンが好きなんだって云える人しか信じない!!亭主の好きな赤烏帽子!!憎悪と半ばしなきゃホントの愛じゃない!!(…?)
結構何度も主張している気がしますが、私はミステリのトリックと犯人と動機を事細かに既読者から説明して貰ったり、所謂ネタバレレビューで知った後でも「それは面白そうだ!」と思って読んだり見たりして、前知識ナシに読んだり見たりした人と同程度かそれ以上に楽しめる自信があります。えへん。
てゆか、そうじゃなきゃ本物じゃないと思います。
故に「何コレおいしい〜v」と口に入れて咀嚼した後喜んでいる人が、「これです(蛇・トカゲ・イモムシ、etc爬虫類or昆虫)」と云われて、しばし固まるのは当然だと思うけど、吐いたり気持ち悪がったりすすめた人をなじったりするのはおかしいと思う(……?)。
…そう考えてみると、巨大イモムシの姿蒸しは多分とっても美味しいんだろうけど、初めに知ってしまうと、アタシどうしても食べられない…。
というわけで、ネタバレを嫌う人の気持ちも心の底からよくわかる、ような気がする。
『半身』すごい面白いからいろんな人にすすめたいんだけど、だからわたくしは上手にすすめられないのです。
でもでもでも。すごく面白かったのです。同作者同翻訳者で二冊目も出るらしいからとっても楽しみです。

コメント